今日もリアは愛想笑いを浮かべ男のやりたいようにさせた。
そんなリアの脳裏に浮かぶのは誰か分からない男の人。
ひどく懐かしくて愛おしい。
それと同時に果てしない不安が胸を襲う。
怖くて布団に潜った。
ある日、ふと窓の外を見た。
カップルだろうか。
しばらくイチャイチャした後口づけを交わした。
彼女はとても幸せそうで……。
記憶が呼び起こされる。
『リア。』
優しく名前を呼ばれ、優しく髪を撫でられ、暴力で自分を制そうとなんてしなかった、全てを優しくしてくれた彼。
大好きだった。
顔も思い出せない彼だけど、好きだ。
今でも、愛してる。
あの男に抱かれた自分を拒絶されたくなかった。
あの優しい手で、声で、撫でてくれない、呼んでくれない。
それが怖かった。
思い出したい!
「レ…ク……?」
涙が零れた。
それを後ろから拭われる。
すぐに誰だか分かった。
「やっと見つけた……!リア、会いたかった!」
リアは一つ大きく頷くと身体をレクスに預けた。
久しぶりに交わされる愛のこもった口づけ。
「私、あの人に……。」
「いい。リアであることに変わりはない。」
もう一度口づけを交わした。
「帰ろう?」
口づけを解いたレクスが唇のすぐ近くで囁いた。
息が当たったのがリアを戦慄かせた。
「んっ……!」
身体を強張らせるとレクスが低く笑ったのが分かった。
「どうしたの?こんなことで感じるようになったとか?」
「違っ……んっ……!」
腰の辺りを微妙な力加減でくすぐられつい言葉を切った。
「止めっ……!」
レクスは優しく微笑むと手を離した。
それに物足りなさを感じる。
「ねえ、ホントにもうおしまいにしちゃうの?」
「だって止めて欲しかったんでしょ?」
「それは……。」
「嘘。また今度たっぷりお仕置きしてあげるから今は我慢ね。」
リアはコクリと素直に頷いた。
その様子にレクスはリアの髪を撫で、唇には自分のそれを重ねた。
リアもゆっくりと瞼を落とす。
二人は何度も口づけを交わした。
失った時間と記憶を取り戻すように。