その2ヶ月前
僕はカブール近郊の村のある家の地下室にいた。
この家の主は、パメラという30代半ばの女性で、CIAの工作員として活動していた。
彼女が工作員になったのは、教師をしていた妹がタリバンにより暗殺されたからだった。
タリバンは女性教師の暗殺を繰り返していた。
パメラは妹の身を案じ、教師をやめるよう何度も説得してきたが、子供達には絶対に教育が必要だからと、妹は姉の忠告を聞き入れなかった。
目立たぬように密かに子供達に教育を施していたが、ある日家路を急ぐ彼女の頭を、いきなりタリバン兵が撃ち抜いたのだった。
しかも倒れた彼女に何発も何発もこれでもか、というほど撃ち込み、唾を吐きかけ去って行ったのだ。
妹が夜になっても帰らない事を心配したパメラが捜しに出掛けようとしたところ、妹の教え子の親が知らせに来たのだった。
大変な事に…
パメラは半狂乱になった。
悲しみと怒りと失望とに襲われて正気を失いかけた。
パメラ自身、興味本位で塗っていたマニキュアをたまたまタリバン兵に見られ、その場で指を切り落とされた過去があった。
来る日も来る日も泣き明かした。
タリバンを憎み恨んだ。
そして、この国を変えたいと心の底から願ったのだった。
どうすればいいのか?
あのタリバンの連中をこのアフガニスタンから抹殺しなければいけない
アメリカ…
力のあるアメリカに協力しよう
もしかしたら…
変わるかもしれない
パメラはどう協力すればよいのか悩んだ。
そんな時、ある人物が家の戸を叩いたのだ。
「妹さんは本当にお気の毒な事で…」
そう切り出した女性はそっと見舞金をとパメラに渡した。
「私は貴女を知らない。これは受け取れない」
と拒絶したパメラに
「私達は同じ境遇です。私も主人をタリバンに殺されました。だからこそ貴女を選んだのです」
訝るパメラに彼女はこうささやいた。
奴らをこの地から消したくはないの?
自分の心を見透かされたようでパメラは一瞬たじろいだ
「大丈夫よ。私はアメリカのある組織の者よ。貴女の力を貸して欲しいの」
そして、その日からパメラは妹の仇を討つため、この国の女性や子供達が自由に生きられるようにするために、CIA工作員の道を歩き出したのだった。