お互いの手を重ねて歩いていく。
レクスはリアに合わせてゆっくりと歩いた。
そのおかげでリアは楽に歩けた。
「ねえ、ここまでどうやって来たの?」
そう訊かれたレクスは歩みを更に遅くすると、リアに微笑み、顔を近づけた。
「――っ……!」
身を強張らせ、きつく目を閉じると、寸前で気配が止まった。
ゆっくりと目を開けるとレクスとまともに目が合う。
「そんなにして欲しかった?」
「――っ…なっ……!違うわよ!」
唇にかかる吐息に小さく震える。
記憶を取り戻したいと願ったときからだ。
リアがその程度のことにも敏感になったのは。
「どうやって来たのか教えてあげようか?」
「っぁ……別にっ…い…い……!」
「何で?そっちから訊いてきたんだよ?このまま教えてあげてもいいよ?」
「う…んっ……!また後でいいから!」
涙目で見上げる。
(だから離れて!)
祈るように見つめるとレクスは離れてくれた。
「後でリアは何してくれるの?」
「え?何で?」
「だって止めてあげたんだよ?お礼にリアから何かしてよ。」
リアはそんな話聞いてないときつく見上げるが、いつものあの笑顔で軽く受け流された。
「そういえばさ、ここに来れたのはいいんだけどね、その……。」
――帰れない。
突然の衝撃の一言に固まる。
「は?」
「いや、方法はあるんだよ?ただちょっと場所が悪すぎて……。」
そういえばここに来てから魔法が発動しない。
独学とはいえ、その辺の魔女よりかは使いこなせていたはずだった。
レクスも国のために働けるほどは魔法が扱えた。
「俺が思うに多分この屋敷の壁のせい。」
「壁?」
「そう。多分魔力封じの石を混ぜたもので全部作られてる。」
「でも、壁だけなら…」
「リアの着てるその服も混ざってる。」
リアの着てるのは白の薄いワンピースだった。
石はその辺によく転がっているものと同じ色で、白い服に混ざっていたらすぐに分かる。
「凄く細かくしたら混ざってても分からない。」
「そんなことこの世界で出来るの!?」
レクスはつい声を荒げたリアの口に、自分の手を当てた。
その時、背後に気配を感じる。
(しまった!気がいってなかった!)
二人が振り向いたその先にはあの人がいた。
「我々は開発したのだよ。魔物を人の手中に納める術を!!」
そこには白い悪魔が立っていた。