「階段、あがれるか?」
『大丈夫』
とは言ってみたアキだが、すぐよろけてしまうので、カズヒロが助けながら、何とか上がれた。
クラスマッチ当日。
昨日の事件を感じさせない程、当たり前のように空は晴れ渡っている。
「よしっと!」
カズヒロは自分に喝を入れて、家を飛びだし、アキを迎えに行った。
「アキ!」
…いつも、大きな声で、ベタなドラマみたいだな。
一瞬、そう思ったりして。
呼ぶと、元気に2階の一室から元気なアキが出てくる。
そう、元気なアキが…ね。
いつも、俺の姿を窓から見ているのだろう。俺の口が動いたら、呼んでるって、思ってるのだろう。
でも、今はアキが出てきたのはいいが、カズヒロはすぐ2階に行って、アキをおぶっていかなくては。
その思いだけ。
叔母のアツコさんの心配そうな顔も横目に見つつ。
「カズヒロくん、よろしく。」
「分かりました。」
冷たく張り詰めた空気を掻き分けるように、学校へ向かうカズヒロ…とアキ。
「寒くないか?」
『…。』
そうだ。おぶっていると、俺は手話を使えない。
するとアキが、カズヒロがしてるマフラーをするする緩め始めた。
「ちょっとおい!…って、寒いのかなあ…。」