悪魔の天使 (44)

暁 沙那 2011-09-28投稿
閲覧数[362] 良い投票[0] 悪い投票[0]

レクスの手を握る手に力がこもる。

「さあ、帰っておいで、リア。」

伸ばされた手に首を横に振る。

「いいのか?また、ああなるぞ。」

リアの肩が一つ、大きく波打った。

「さあ。」

更に伸ばされた手に一歩後退った。

「行きたくない……!」

リアはレクスの腕にしがみつくように手を強く握った。

リアが小さく震えているのが分かった。

「行かなくていい。」
「そういう訳にはいきませんな。次のお客様が待っている。」
「リアはあんたらの物じゃない!」

リアの頬を一滴の涙が伝う。

少し驚いた顔でレクスを見つめた。

「では、それを買い取ると?」
「だからリアはあんたらの物じゃ…」
「物ですよ、私たちの。」

扱いが酷い。

人を人と思わない発言に思わず怒りが込み上げる。

それを抑え、一つ息を吐くと睨み上げながら訊いた。

「いくら?」
「三億くらいは頂くことになりそうですね。それでもまだ安いかと。」
「兆くらいならいける。お宅の好きなように。一括払いで。」
「分かりました。ではこちらで検討しておきましょう。」

そう言ってあの人は去っていった。

レクスはまた息を吐くとリアを見た。

まともに目が合う。

「ごめんなさい…兆くらいってそっちに凄い不利益なことを……!」

レクスから目を逸らして泣くリアを無理矢理こちらに向かせた。

「不利益になるのは、君がどこかに消えてしまうとき。だからそうならないようにしたい。」

真摯な目で見つめられると動けなくなる。

まるで出会ったあの日のように。

「あの世界に帰ったら結婚してほしい。正式に申し込みたいと思う。」

驚きに目を見開く。

しばらくそうしてから俯いた。

そしていきなりレクスに抱きつく。

「私、わがままだから!迷惑いっぱいかけるし、いっぱい怒らすと思う。それでもいい?後悔しない?」
「後悔ね。させれるもんならさせてみなよ?」

リアは笑みを浮かべると宣戦布告した。

「知らないんだから!」





初めて知った。
本当の幸せを。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「暁 沙那」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ