だがヤマト神は、臣民への深い慈愛とともに、峻厳なる厳しさも持ち合わせていた。
ヤマト民族が誤った道を行くとき、過酷なまでの気付きのための試練を与えた。
臣民自らが誤りに気付くよう、気付いて本来の道を選択するよう、敢えて苦難を与えるのである。
だが、ヤマト民族は、いつも苦難を乗り越え、そこから行くべき道を見出した。
そこから育まれた民族性は宇宙の理(ことわり)に、もっとも近い成熟した文化を有していた。
すなわち自己犠牲、謙譲、忍耐、礼儀といった、およそ自己保存に根ざす利己的な動物的本能とは、対極をなすものであった。
あらゆる知略を持ち、世界をも掌中に納めんとするエイド人にとって、覚醒し神の力を与えられたヤマトは唯一、エイドを凌駕する恐るべき力を持った相手であり、何より人間を支配するための最大の手段である「欲望」を自制できる、統制の効かない危険な種族と見なした。
イリス神はヤマトだけは、この世から抹殺すべき最大最強の敵として、歴史上、ヤマトの堕落や天皇と臣民の分断を図り、外敵を差し向け、時には禁断の兵器をも駆使して、ヤマト民族の覚醒を阻止し、ヤマト民族絶滅に全霊を傾けていた。