あの後二人で誰にも見つからないように、結界の弱まっているところを探した。
しばらくの間結界を放置していたらしく、ムラがたくさんあった。
レクスの魔力強化の札及び陣と、リアの魔力のコントロールで、上手く結界を壊し元の世界に帰れた。
「よく出来ました。」
レクスの帰ってきての第一声は子供に言い聞かせるような一言だった。
ついでに頭を撫でて。
「私、子供じゃないんだけど。」
頬を膨らませて言うと今までよりもずっと幼い笑みが返ってきた。
それにリアは何も言えなくなる。
ただ下を向き、膨らませたままの頬を朱に染めるだけしか出来なかった。
そうこうしていると後ろから声が聞こえた。
「まあ、レクス様!お帰りになられてたんですね。よかった、無事で!」
「エリー様、ご心配していただきありがとうございます。お陰様で二人で戻ることが出来ました。」
「リア姉様……。お帰りなさいませ。無事で何よりです。」
冷たい目をリアに向け、すぐにレクスの方を満面の笑みで見た。
「さ、少しでもお休みになった方がよろしいですわ。こちらへ。」
エリーはレクスに自らの手を差し出した。
『さあ、私の所にいらして下さいな。』
頭の奥底にあった記憶の欠片が訴える。
止めたいと。
行かせないでほしいと。
それに気づいたリアは咄嗟にレクスの手を取っていた。
「休むなら私の部屋で休まない?」
自分から求めてこないことが多いリアのその言葉に、レクスはもう少しだけと求めた。
結果、リアを傷付けるとしても。
「別にいいけど。でも、何で?」
耳の側で囁かれ背中に甘い痺れが走る。
「んっ…ぁ……!何でってそれはっ……!」
「それは?」
あえて口で言わそうとする。
リアはそんなレクスに寄りかかり、羞恥に震えた声で呟いた。
「お礼するんでしょ?私から。」
「したいの?」
「まさかそんなわけないでしょ!?」
「ああ、お仕置きの方が良かったんだね?」
「違っ!!」
勢いで押し離す。
でも、その押し離したときの手を逆に取られた。
「すみません。エリー様の早速のお誘いですがリアの所に行くので。」
「リア姉様の?」
「リアとは契約しているのに勝手に人の物になったからお仕置きするだけですよ?」
レクスのいつもの笑みがリアにはもっと黒く見えた。