(…やめときなよ…)
どこからともなく聞こえる声。
(…あの人に恩返しを…)
(…人間なんてその時だけさ。優しくされたからって恩返しまで!)
姿は見えないが、辺りでかすかな光がいくつも光っていた。
(天帝様!)
(お前も知ってるだろう。人間の本性を…。野蛮で狂暴で、平気で自然を破壊し、生き物を殺す。挙げ句に人間同士で争いをする…。そんな人間でも、優しいと言って恩返しをするのか…?)
(…すべての人間が悪いのでしょうか?私は、あの少年を信じたいんです。あの時、私を助けてくれ、優しい言葉をかけてくれた少年を…)
(………)
(…天帝様!)
(やめておけ…)
(…せめて、何かの形でお礼を…!)
(…明日の朝、朝陽に当たる時願うが良い…。人間になりたいと…)
(…天帝様!)
辺りが騒がしくなる。
(…ただし!)
強い天帝の言葉に、騒がしかった辺りが、水を打ったように静まりかえった。
(天界に逆らって得た事、代償は大きいぞ…)
(…代償…)
(…お前の命だ…)
(命!?)