任せろか…
悪いが、お前らCIAの任せろは信用できないんだよ…
の、言葉をぐっと飲み込んでタックが用意したボロボロの車に乗り込んで秘密基地を後にした。
「こう言っちゃ悪いが、奴らは信用できないなあ相変わらず」
チェスがボソッとバックシートに身を潜めながら呟いた。
「そうだな…」
僕は首の後ろに鉛の様な重さを感じながら周囲に注意を向けながら車を走らせた。
CIAは世界一巨大な諜報機関と言っても過言ではないだろう。
じゃあ中身も世界一か?
タックには悪いがそうとは言いにくい。
何と言うか…アメリカ人特有の傲慢さと自信過剰が様々な弱点を作り出してしまっている。
事実、スパイとして使っていた男により、CIAは米軍基地内で数人のCIA要員が男の自爆により道連れにされた。
CIAの要員損失としては過去最悪だった。
その男は犯行前、ビデオで声明を語っていた。
奴らは金で同志を裏切れと誘って来たと。
しかし、男はダブルスパイだった。
なんて甘いのか…
アルカイダにせよ、タリバンにせよ、ある種の信念や大儀に生きる人間はそれ程簡単には寝返りはしないのに。
世界中の誰もが高級料理やブランド服、高級車を目的に生きている訳では無いのに。
それがまだわからないのか…
しばらく誰もが口を開かなかった。
人を射殺したあと、気分など良いはずがない。
どんな戦争でもそうだか、戦地から帰還した後にPTSDに苦しむ兵士は多い。
特に一般兵士は顕著だ。
特殊部隊員はメンタルタフネスレベルや練度も高く、実戦経験も豊富だから少ないが、それでもキツい。
キー!
タイヤの摩擦音が響き渡ると銃声が鳴り響いた。
「!?」
瞬時に全員が戦闘態勢に入った。
前方に米軍車両から火の手が上がっている。
米兵が右往左往している。
武装勢力の襲撃だ。
応戦に手間取っている。
少なくとも三台の車両で武装勢力は襲撃している。
「どうする?」
ウィが聞いた。
「援護する!」
僕は叫んだ。
正直難しい判断だ。
一つ間違えばこちらも武装勢力と間違われる可能性が高い。
が、見過ごす訳にはいかない。
米兵は肩章からは第82空挺師団らしい。
レベルの高い部隊だが苦戦している。
一般車両は逃げる事に必死で車は凶器と化している。