親からすてられた子供は人ではないと思う。
始めのうちはそんなことを思ったりはしなかった。
だけど日がたつにつれて服が、体が汚れていき周りが僕を見る目がかわり、何もしてないのにまるで存在してはいけないような目で見始める。
人目がつかないようにと移動した路地裏は少し寒かったけど周りの邪魔にならないだけ少し嬉しかった。
ある日僕は仕事に苛立つ大人に見つかってしまった。
人目がつかない場所。
身なりの汚ならしい、明らかに親がいない子供。
標的にするには十分すぎるものだった。
そこからは身体的苦痛が続いた。
痛い。苦しい。
いくら思っても誰も助けてくれない。
それが一番悲しかった。
何日こんな日々が続いただろう。
頭がぼーっとして、力がはいらない。
ざわざわと声が聞こえる。
いつの間にか市場に近い路地裏にいたのだ。
早くもどらないと。
よろよろと立ち上がり、顔をあげる。
そこには少女の顔があった。
歳は同じぐらいだろうか。
僕より少し小さい。
どうしよう。
僕はおろおろしながら少女から目を離そうとした。
できなかった。
少女の大きな瞳が僕をとらえて逃がさない。
「お腹すかない?」
少女の第一声だった。
僕は反射的にうなずいた。