少女にもらったキャンディーの甘さが口の中に広がる。
並んですわり、一緒に食べる。
不思議な感じがした。
くすぐったいような、恥ずかしいような。
ゴミから見つけたご飯を1人で食べるより何万倍もおいしかった。
「ねぇ、きみの名前は?」
ふいに少女が口を開く。
名前?
「そう。名前。」
僕の名前。
・・・わからない。
「ないの?」
僕はうなずいた。
なぜか少し悲しかった。
「じゃあ、私がつけてあげる!」
驚いた。
そんな言葉がでてくるとは思わなかった。
「そうだなぁ。…あっ!」
思い付いたように声を上げて真上を指さす。
「あなたの名前はソラ。きれいな青空っ!」
ソラ。
僕の名前。
なにもない僕の中に何かが生まれた気がした。
もぅずっと作らなかった笑顔が自然と浮かんだ。
すると少女も笑顔になり僕を見つめた。
「笑ったほうがすごくいいっ!」
僕達は笑いあった。
ふと上を見上げる。
澄んだ青い空が広がっていた。
いつもそこにあったのに久しぶりに見た。
僕も今みている青空のように誰かの心の中にうつるだろうか?
隣を見る。
少女が笑う。
この子の中にうつっていたいと強く願った。