「私の名前はハル。よろしくね、ソラ!」
ハル。
僕が頷くとにっこりと笑って立ち上がった。
「よし、いこう!」
行く?
どこへ?
「とりあえず、ここじゃないどこかへ!」
ハルは僕の手をつかんで走り出した。
引っ張られる感覚が心地良かった。
「川だっ!」
ついたところは森の近くにある川だった。
なかなかきれいで魚とりにはちょうどよさそうだった。
「ソラ、はいろう!」
ハルが靴をぬいで入ってゆく。
僕もその後をおった。
水は冷たかった。
「きもちいいね!」
僕は少しだけ寒かったけどハルが嬉しそうならそれで良かった。
それにしても本当にきれいな川だ。
下をむくと水面に僕の顔がうつる。
すると顔に水がかかった。
「あはは!ぼーっとしてるからだよ〜」
ハルが僕にかけたのだ。
僕は負けじとやり返した。
ハルもやり返してくる。
僕もさらにやり返す。
終わりの見えないみずかけが続いた。
太陽がしずむころハルが帰ろっかと言った。
僕には帰るとこなどないけどハルにはあるんだ。
まだいたかったけど口にはださなかった。
路地裏に戻ってきた。
「それじゃあね、ソラ。」
ハルが別れの言葉を告げた。
嫌だ。ずっと一緒にいてほしい。
そんな想いを口にだせないままでいるとハルが笑った。
「そんな顔しなくても毎日くるよ。」
毎日?
「そう、毎日!明日も明後日もくるよ!!」
嬉しかった。
別れた後は明日がくるのがまちどうしかった。
それからはハルが言った通り毎日遊んだ。
時々大人たちに暴力をふるわれたけど前より痛く感じなかった。
ハルは僕にいろいろと教えてくれた。
アイスは冷たいこと。
乗り物は速いこと。
食事はお金で買うこと。
お金は働いてもらうこと。
知ることがとても楽しかった。
ハルがまっててといったので横になっててそのまま眠ってしまってたみたいだ。
体をおこしてハルと向き合う。
「はいっ」
頭になにかかぶせられた。
花の冠だ。
「ソラ、目を閉じて」
目を閉じる。
真っ暗で少し不安になった。
しばらくして唇にやわらかいものがあたった。
目を開く。
近くにハルの顔があった。
「くちづけって言うんだよ。ずっと一緒にいたいひととするの」
ずっと一緒。
僕が求め続けてきた言葉。
2人は笑ってまたくちづけをかわした。