これが僕らのバイオロジィ(2)

フジヒサ 2011-10-09投稿
閲覧数[543] 良い投票[0] 悪い投票[0]

保坂が出ていくのを見届けると、榊は溜息をついた。
「行きましたよ、保坂さん」
「……マジで?」
がたがたと掃除用具入れが動き、その中から件の若干小柄な中学三年の生物部員、牛原克也が現れた。
「サンキュ、榊。今度何か奢ってやるよ」
牛原にぽんぽんと肩を叩かれ、榊は苦笑する。
「別にいいですけど、なんで保坂さんの体操着模型に着せたりしたんですか?」
榊の言葉に、牛原はにやりと笑った。
「俺体操着忘れて保坂に借りたんだけどさぁ、ただ返すだけじゃつまんねぇじゃん?」
それに、と牛原は付け足す。
「それに、『女の子』が裸で男子校にさらされるってのも可哀相だったし?」
牛原の言葉に、榊は目を見開く。
「牛原さん、骨格模型の性別がわかるんですか?」
「ま、紳士だし」
牛原は得意げに微笑む。榊はそんな意味不明な牛原の発言を聞かなかったことにする。
「ところで牛原さん、保坂さんに追われる心配は大丈夫ですか?」
大丈夫、と牛原は笑った。
「保坂って方向音痴でさ。普通ならこっから五分位のホームセンターも、あいつにとっては往復三十分かかるってわけ」
はぁ、と榊は曖昧に頷き、再度海水魚に餌をやる。
「帰ってきたあとどうなるか知りませんよ」
それも大丈夫、と牛原は右手でブイサインを作る。
「俺、もう帰るから」
軽い足取りで彼は鞄を手にし、生物室を出て行った。
基本的に深沢学園の生物部は下校時間に決まりがなく、自由な時間に帰っていいことになっている。
「とは言え、ちょっと早過ぎないかなぁ……」
時刻は四時半。完全下校の時間まで、あと二時間も残っていた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「フジヒサ」さんの小説

もっと見る

学園物の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ