「結婚したのよ。」
リアの一言に会場全体がざわめいた。
「どういうこと?」
「そんな情報どの教会にもなかったわよ。」
「そんなことよりも何でレクス様はあんな娘と結婚まで。」
ざわめきで小広間は埋め尽くされる。
「あの子のせいよ!!」
一つの大きな凛とした声が響いた。
「あの姉様の恐ろしい魔法でレクス様はそんなことをおっしゃったのよ!なんせあの方は悪魔の子ですものね!!」
その一言にリアの肩が揺れた。
「それか誰も見てくれないからってお金でも出して頼み込んだんじゃないの!?プライドなんてないただの犬よ!!」
「うるさいっ!!!」
怒鳴り声が広間全体に響き渡った。
リアだ。
肩で息をして、顔を背けた。
「私は本当に好きなの。この人が…好きなの。愛してるの。あなたよりもレクを愛してる。」
自らの手を重ね、胸元に当て握り締める。
瞳は辛そうに伏せられ、どこか影を帯びていた。
レクスはそんなリアが居たたまれなくて。
小刻みに震えている華奢な肩を抱き寄せた。
その時に触れた手さえにも反応して。
「俺も好きだよ。
リアを心から愛してる。
生涯ずっと一緒に、隣にいてほしい。
きっと傷つける。
でも、できる限りは大事にする。」
リアは驚いた様子でレクスを見つめた。
でも、レクスの真摯な態度にリアは笑顔を見せた。
(あの時と同じ……。)
涙を溜めながらも愛らしい笑顔を浮かべた。
「私はあなたを永久に愛することをここに誓います。
どんなことがあろうともあなたと共にありたい。
たとえそれが世界中の人に許されなくとも。」
「ずっといよう、一緒に。」
二人の愛の誓いは正式な結婚式の言葉ではないけれども、一番素直な想い。
まだ二人は知らない。
もう刻は悲劇へと向かい出していたことを。