前に、幼い少女が立っている。
男は少女の前にしゃがみ、頭を撫でる。
また、
「会ったね、おじちゃん。」
ん、
「久しぶりだね。でも、もうおじさんの事は忘れていいんだよ。」
「え〜、どうして?」
「どうしても。」
男は優しく少女の手を包んだ。
少女の体がひかり、やがて小さな光の粒になる。
男の手の平から
ふわり
浮かび男の周りを
くるり
くるり
輪をかくと、やがて
ひらひら
屋上のコンクリートを突き抜けていった。
「さっきの子、何処へ行ったの?」
ん?
「気になるかい?」
黙って男を睨みつけた。
男は、こちらに向き直って、ぼろぼろのコートの襟をたてた。
「まぁ、そう怒ることない。あの子はまた、生まれ変わりに行ったんだ。」
生まれ、変わる?
そう
「もう一度人生をやり直す為に。」
あの子は、
「もう三回目なんだ。」
本当に、
「生まれ変わるの?」
ああ
「これだけは、保証する。今度は幸せになれるさ。」
その途端に、全身の力が抜けて、一気に涙が溢れてきた。何度も拭うがおいつかない。
さぁ、
「中へ入ろう。だいぶ冷えてきた。」