ひとしきり泣いて、気がすんだ。妙に気持ちが落ち着いてきて、男が聞き出すでもなく、口が勝手に動いていた。
「咲ちゃんは、生まれて七ヶ月でガンだって言われたんだ、あと一年もつかどうかだって。それを、」
頑張ったんだ
「咲ちゃんは六年生き抜いたんだ。」
それを
「君は見てたんだな。だが、何故自殺などした?」
咲ちゃんが
「ここ一週間ずっと危ない状態が続いてたんだ。それが昨日から危篤になって、もう先生がもたないだろうって。」
だから、
「咲ちゃんの変わりに僕が・・・・僕も、ガンなんだ。あちこちに転移して、骨にまでなっちゃったからもう手の施しようがないんだって。」
どうせ
「持って行くなら僕の魂を持って行けって、神様と死神に言って自殺した。」
男は少年の頭を、
くしゃくしゃ
に撫で、それから肩を
ぎゅ
と掴んだ。
「君は、男だなぁ。」
しかし
「命を粗末にするな。あの子の分まで君が残りの人生を生きなければ。」
男は肩を掴む手に少し力を込めた。
「君にも、残された時間で出来ることはあったんだ。あの子の事を考え、想ってやる事。」
それが
「あの子に、いやあの子の魂に生きる生命力(ちから)を与えてやれるんだ。」
・・・
「死ぬ、べきじゃなかた?・・。」
ああ
「だがしかし、君は男として立派だよ。」
どうでも
「いいよ、僕は・・咲ちゃんを・・守れなかったんだから・・。」
男は、
ふぅわり
破顏った。
いいや、
「守れるさ。それが君の“望み”ならね。」