「宮沢さん、まずはHAPIに行くべきでは?」
捜査は路頭に迷っていた。
表沙汰に出来ないゆえに指名手配はもちろん目撃情報を集めることも下手にはできなかった。
特別事件部はあくまで闇にまぎれて捜査にあたらなくてはいけないのだ。
「ここの部署に来て20年これ以上に面倒な事件は山ほどあった…たが、今回のは訳が違う。
相手が青年である点、HAPIという未知の機密施設…
お前の言う通り一度お邪魔した方が良さそうだな…」
宮沢は山積みにされた資料を見ながら言った。
「でもHAPIってどこに?このバカ多い資料にはHAPIの収容人物と概要、施設内の見取り図はありますけど施設そのものがどこにあるかは記されてません…」
「HAPIに行くには、この資料より多い用紙に記入して手続きを取らなきゃならん。用紙に記入し上から許可が降りるまで最低3日はかかる。」
北元は山積みの資料を見つめた。
「マジすか…
そんなに秘密に包まれたとこ…
ますます行きたくなって来ましたよ。」
宮沢は資料から目を離し、北元を見てくすりと笑った。
「じゃあ用紙を手配するから心の準備しながら待ってろ。」
そう言って宮沢は椅子から立ち上がり、部署を後にした。
北元は資料の山を乱雑に大きな段ボールに詰め込んだ。
そして長く長く深呼吸した。