様々な事に憤りを感じながら再び訪れた日本で、私にはしなければならない事があった。
それは、被災地と被災者の様子を映像におさめ、彼に送るこ事。
これは彼からの直接の指示ではなく私の上司からの指示だった。
私の上司…それは…
NISー米海軍情報局の情報士官チャック中佐からのものだった。
表向き、私はIT関連の企業に勤務している事になっている。
けれど実際の仕事は海軍情報局の上級アナリスト。
ただ、ティームの奥さん達を含めほとんどの人はそれを知らない。
知っているのは、彼と彼のティームメイト数名しかいない。
彼との出会いも仕事に絡んでの事だった。
その出会いは約二年前
ある日、チャック中佐からイエメンでの情報収集任務の命令を受けた。
イエメンはアルカイダをはじめ様々なテロリストの活動拠点として注目されはじめていた。
現地に行って実態を把握して欲しい
これが任務だった。
好奇心旺盛な私は喜んで引き受けた。
現地は危険だぞ…覚悟出来ているか?
との中佐の問いかけにも特段不安は感じていなかった…と言うより、毎日毎日情報分析ばかりしている日常から抜け出して、刺激ある体験を求めていた私には、渡りに船だった。
同行するのはCIAのタックリーウィルソンと、同じくCIAのSADのパムだった。
タックリーウィルソンー通称タックはいかにもアメリカ人らしい白人で、なかなかアクの強い男だった。
引き換えパムは物静かで穏やかな感じ。
この三人でイエメンの情報収集へと向かった。
イエメンに入る前からトラブルが続出し、イエメンに入ってからもなかなか大変な毎日だった。
そんなある日、私達は、とある情報筋から得た情報で、テロリストの訓練キャンプを確認するために車を走らせていた。
ガッコンガッコン激しく揺さぶられながらの車中で私は、必死に吐き気と格闘していた時だった。
伏せろっ!
パムが叫んだ。
襲撃だっ!
カンカンッ!
ボンネットに弾が撃ち込まれるのが見えた…すると、二台の車が私達の車を挟み込み停車させた。
AK銃を持った覆面の男達が銃口を向けながら迫ってきた。
クソッタレ!
タックが毒づいた。
抵抗するな!おとなしくしてろ!
パムがたしなめた。
男達は運転席のタックを引きずりおろすと乱暴に押さえつけて袋を頭に被せ、後ろ手に手錠をかけた。