「私達は子供達の健康と栄養状態を調査しに来たんです。IDも書類もあるはずです」
私はなるべく怯えた風を装った。
「確かに…あるが、どうせフェイクだろう?CIAがよく使う手だ」
!? ドイツ訛り…
ドイツ人?
やっぱり…
最近ネオナチやイスラム原理主義に傾倒するドイツの若者がイエメンで軍事訓練を受けているという情報がある…アルカイダに組する若者もいるらしい…
貴重な情報になる可能性がある…
色々探らないと…
「まあ嘘は直ぐばれる。これからお前達にはしてもらわなければならない事がある」
この男は中東系の訛り…
「袋を外せ」
でリーダー格か…
無造作に袋を剥ぎ取られた。
まぶしい…
薄目を開けて目が慣れるのを待った
まだ陽が高いらしい
男達は相変わらず黒い覆面姿のままだ
何人いるんだろう?
見たところ…5人…
「用意ができたぞ」
ドアを開けて6人目が現れた。
「そこの白人!来い」
タックを指差し手招きをしている。
タックは顔を真っ赤にして睨みつけている。
「来いっ!」
男はタックの髪の毛を鷲掴みにすると乱暴に引っ張った。
「クソッタレ!痛いだろうっ!」
「逆らうなっアメリカーナ!」
ドスッ!
強烈なボディブローにタックが身体を折った。
両脇を抱えられてタックは隣室に連れて行かれた。
リーダーらしい男が何か叫んでいる。
その後、タックのくぐもった声が聞こえてきた。
「我々は…アメリ…スパイ活動のた…」
よく聞こえない
次はお前だ
今度はパムが連れて行かれた。
タックは憤懣やるかたない顔で戻ってきた。
「何?」
「ビデオだ…アメリカ政府に見せるんだろう」
「黙れっ!」
銃をこちらに向けて威嚇してきた
これね…この男がドイツ人ね…
やけに背が高い
「次、お前」
私の番だ
椅子に座らされると照明が当てられた。
「これを読め」
いわゆるカンペには、私達がアメリカのスパイで非合法な活動をしていた。他国を侵略するアメリカの手先だ。私達は間違っていた。だからアメリカは手を引くべきだ…
のようなことをカメラの前で話せ と
仕方なく私は脅迫通りに、感情たっぷりな演技をしながらカンペを読み上げた。
読み終わるといきなりリーダーはナイフを抜き、私の首に刃を立てた。