冷たい…
ナイフの刃はやけに冷たく感じた。
「この女やゴリラどもを助けたかったら、10時間以内に100万ドル用意しろっ!用意しなければ皆殺しにする!」
撮影完了か…
100万ドルか…
なんか安い気がする 100万ドルあったら何するかな?
家建てて、それから…あ、こんな事考えてる場合じゃないんだ
部屋に戻されると3人だけになった。
「ねえ、あの背の高い男、ドイツ人よね?」
「らしいな。最近多いらしい。西洋諸国の人間がイスラム原理主義に傾倒してテロリストになるのがな。益々厄介になる」
パムが言いつつ頭を揺らした。
「俺達の価値はたった100万ドルってか?軽く見られたもんだぜ」
タックはまだ紅い顔を火照らせている。
「腹が減ったなあ。ユき腹減らないか?」
「リン、私はリンでしょ、間違えないでよジョン」
私はタックを睨みつけた。
「ああそうだった」
本当にCIAの要員なんだか。
タックの行動には緻密さが見られない。
私達の偽装身分は国連職員。
勿論IDから書類、何もかも本物そっくりの偽物。
それもそのはず
アメリカ政府が偽造しているのだから。
国連には一切内緒だけれど。
まさかCIAや NISとして入る訳にはいかない。
「腹減ったなあ」
「我慢しろ。2日や3日食べなくても死にはしない」
「お前は兵隊だからいいだろうがな…」
「ジョン!口に気をつけろ!」
パム…リックがたしなめた。
それから皆黙り込んだ。
気がつくといつの間にか眠っていたらしい。
どれくらい経ったのだろう?
部屋は薄暗い
「リック…どれくらい経ったの?」
「9時間以上だよ。奴らが喚いてた。あと1時間だぞっ!ってな。政府と交渉してるらしい」
「じゃあ、タイムリミットが近いって…」
「そのようだ。引き伸ばすだろうけど政府としては。でもわからないな…」
リックは平然としている。
さっき兵隊ってタックが口走ったけど、どこの部隊なんだろう。
「何とかなるよ、心配しなくてもリン」
パムが優しく声をかけてくれた。
「そうね、大丈夫よね」
不思議な位に恐怖が沸いてこない。
余程私は鈍感なのだろうか…
ドンッ!
激しくドアが開けられた。
「来いっ!」
また私達はカメラの部屋へ連れていかれた。
「時間だ…殺す」