男達はタックを椅子に縛り付け猿ぐつわをかませると、私とパムを部屋の隅に座らされた。
部屋はタックに向けた照明一つで他は嫌な暗闇が支配している。
「準備できたか?」
リーダーがカメラのセッティングを確認している。
「繋がった」
ドイツ人らしい男が指を立てた。
「見えるか?このゴリラが?…そうか。お前達が見殺しにするんだぞ!わかっているのか?…国務長官自らお出ましか?たいそうなもんだな…このゴリラはアメリカの犬だからな?…国連職員だ?嘘は終わりだ、我々はお前達アメリカには騙されないっ!時間は与えた。にもかかわらずお前達は金を用意しなかった。約束通りこのゴリラから殺す…止めなさいだと?悪いが指図は受けない。この男の最期を見てやるんだな国務長官さんよ」
国務長官って…ヒラリークリントン国務長官?
ライブ中継する気だ…殺人の…本気なんだ…この男達…
覆面姿の男達が不気味にタックとリーダーを見ている。
どうしょう…何かしないと…でも何も出来ない…
リーダーは大きなナイフを抜くとタックの首筋にあてた。
「よく見ておけよ。一生悔やむがいい。あんたが金を渋ったばっかりにこのゴリラは首を切り落とされるんだからな」
タックは興奮して頭を振り始めた。
「あははははは、あがけあがけあがけーアメリカーナ!」
リーダーはナイフを振りかざした。
私は視線をそらすことも声を出す事とも出来ない。
タックッ!
声にならない
神は偉大なりー!
叫ぶとリーダーはナイフを振り下ろし…
ヒュンッ!
ヒュヒュヒュヒュヒュンッ!
リーダーの動きが止まった。
え!?
男達がバタバタと倒れていく
え!?
何??!?
いきなり黒い2つの影が現れるとひとつの影がリーダーを後ろへ引き倒した。
もう一つの影は隣室へと入っていく。
「クリアッ!」
「クリアッ!」
え!?
「こちらフライングスパイク…フライングスパイク…オールクリア…コンプリート…オーヴァー…」
私は呆然としていた。
一つの影が私に向かって歩いてくる。
ナイフを出した…
こ、殺される…
お父さん…お母さん…ごめんなさい…
ナイフが突きつけられた…終わりだ…
「お待たせを致しましたマドモアゼル。お怪我は御座いませんか?」
へ?
黒い影は私を縛っていたロープを切ると覆面を脱いだ。