私達はアメリカに到着すると、詳しい事情聴取を受けた。
その後、一週間程の休暇を経て、私は通常の勤務へと戻った。
けれど、困った事になかなか仕事に集中出来ない。
情けないけれど、彼が…JJのあの姿が頭にこびり付いて離れない。
「ハァ…」
「ユキ、どうしたの?」
「え?」
「最近様子がおかしいけど、眠れてる?」
「うん」
「悪夢とかは見ない?」
「悪夢?」
「そう悪夢とか食欲がないとか…」
同僚のアンリ
彼女とは公私共に良き理解者同士
姉妹のような存在
「ちょっと、私はPTSDじゃないわよ」
「自覚してないだけじゃない?あれほどの事があったのよ、ダメージは受けるわ」
「私は問題無いわよ。そんなに弱くないから」
「まあユキはタフだから…でもおかしいわよ最近」
「そんな事…」
「わかった。男ね?どんな人?」
「違うわよっ!」
「当たりね!教えてよ!」
「違う違う違う!ほら仕事しなさいよ。ソマリアの案件急ぎでしょ?」
「まあいいわ。ね、今夜家で飲もう。明日オフだし」
「今夜?」
「いいでしょ?私ユキのにくじゃくが食べたい」
「それを言うなら、にくしゃが」
「あ、まだまだ日本語は難しいわね」
アンリは私と話す時は日本語で話す。
なかなか流暢な日本語だけど、あと一息
「で、どんな人?」
アンリの家は広々とした一軒家
彼女の両親が引っ越した後一人残り住み続けている。
「このワインおいしいわね」
「話を反らさない。誰?」
「わからない…」
「何よそれ?」
「わからないのよ」
私は事の顛末を話した。
「デブグルねえ…JJっていうのね」
「そう」
「任せて」
「任せてって、どうするの?」
「いいからいいから!さ、飲みましょ。ユキのにくじゃく…じゃないにくしゃがおいしい〜」
「…」
それから、ひと月経ってもふた月経っても何も進展はなかった。
仕方ないよね…
仕事に集中しよう
そんな時、中佐からの指示である項目についてのレクチャーの指示があった。
ある部隊へのレクチャーだが、この件は一切他言無用だ。極秘扱いだ
と釘を刺された。
レクチャールームに向かうと、清掃業者のユニフォームを着た男の人達が待っていた。
「遅くなりました。私はアナリストの…」