「私も君も戦士だ。だからこそ分かり合えると思う。傷つけあう虚しさも悲しみも…どうだろう、憎しみの連鎖を止めないか?微力でも変われる可能性はあるだろう?」
「私は…私は貴方のような人に始めて出会いました。貴方と話すまで憎しみしか感じなかった…でも、もしかしたら私も間違っていたのかもしれないと思い始めました。あの子供達は神の元へ行くのだからと…攻撃の…攻撃の道具にしました。しかし、違うのかもしれない…」
「私はもし地獄があるとしたら間違い無く地獄に落ちるだろ。人を殺めるとはそういう事だと思う。確かに仕事だし任務だ。でも地獄行きだ。だから…だからこそこんな思いを誰にもさせたくはない。ミスター、協力して貰えないか?寝返れなどとは言わない。ダブルスパイになれとも言わない。殺戮の応酬を止めないか?」
「地獄…そんな考えを…貴方は自分が正しい行いをしていないと?」
「善悪だけで物事は決まらない。人は少なからず過ちを犯し罪を重ねている。私は人命をも奪う仕事を選んだ。報いは当然だ。その責は負わねばならない。出来うる限りの努力をしなければならない」
「私は仲間を裏切らない…裏切らないが私も殺戮の応酬を止めたい…何が出来るのか…」
「仲間を説得したらどうか?無駄な殺戮をやめることを」
「…」
「簡単ではない。が、意義ある事ではないか?」
マスターは…
スパイでも寝返った訳でもなく、死をも覚悟してテロの終結に尽力する為に、奔走している。
勿論、タックやCIAの説得には苦労したが。
僕はマスターを信じる。
それは勘だ。
当たりが外れかは時が経たなければわからない。
今後、アフガンも世界もどうなるのか?
8月には我々デブグルの仲間22名と米空軍CCT3名他を乗せたCH47チヌークヘリがアフガン東部のタンギ渓谷で、タリバンと戦闘中のレインジャー部隊救出に向かい、対戦車砲で撃墜された。
デブグルの約17%に登る隊員の損失だった。
僕の仲間達だ。
この悲しみの中、敢えて僕は優希と結婚した。
仲間達の祝福を受けながら、死んでいった者達へ想いを馳せた。
平和…唱えるのは簡単だが実現には多くの犠牲がある。
それを心に焼き付け生きていこうと思う。 命ある限り。
完
震災にて亡くなられた方々、また世界のあらゆる戦闘で命を落とした全ての人々のご冥福を心より祈念致します。