悪魔の天使 (50)

暁 沙那 2011-12-02投稿
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時計の針はなぜ進むのだろう。
歯車のせいだ。

私はなぜ――?





小さい頃、母はリアを捨てた。

『あんたといると不幸になる。』

小さい頃、叔母と父が妹と姉と新しい母を連れてきた。

『この人が新しい母さんだよ。』
『お前なんかよりずっと賢い。この子達を見習いな。』

魔法も独学で学び、執事も召喚した。

人一倍頑張って人よりは魔法を操れるようになった。

それでも独りだった。

味方はたった一人の執事だけだった。

だから求めた。

あの時手を差し伸べてくれた彼を。

彼が自分のもので自分は彼のもので。

独りじゃなくなった。

嬉しかった。





「もう、私は――なくていい!」





部屋に響くのは時計の進む音。

涙が零れた。

リアは涙を軽く拭い、隣で眠っているレクスを見た。

起きる気配はなく、規則的な呼吸音が聞こえてくる。
リアは幼いその寝顔に軽く笑みを浮かべ、すぐそばにあった手を握った。

「ごめんね、私はもう戻れない。残りはあと三日だから。だから……。」

痛むような顔をしたあと手を離すと、眠りについた。



朝、寝室で一日が始まった。

「リア、おはよー!!」
「レク、おはよう。本当に朝からいらっとするくらい元気ね。」
「でしょー?」

リアはいつも通りの嫌味を言うが、完全に流される。

「ホントにリアは朝が苦手だね。」

頭をぽんぽんと軽く撫でられリアは少し俯いた。

「リア?」
「…バカ……。」
「そういうとこが好きなくせに。」

リアは一つポカッと叩くと歩き出した。

ドアのところまで来ると思い出したかのように立ち止まった。

「今日は別のとこに遊びに行きたい。」

ドアに手をかけたままレクスを見つめる。

「ぷっふははははっ!!そっか、分かった。今日は仕事もないし、遊びに行こ。」
「うん!じゃ、準備してくる!」

リアは勢いよく出ていった。

すぐに
「わわっ!?ごめんなさい!」
そう言う声が聞こえてくる。

「リア様ったら、ずいぶんと嬉しそうなご様子ですね。」
「うん、今日は別のとこで遊ぶんだ。久しぶりだからじゃないかな。」
「まあ、そういうことでしたか。」

レクスはリアとぶつかりかけたであろう女中と、微笑ましい会話をしながら支度をするのだった。



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