時計の針はなぜ進むのだろう。
歯車のせいだ。
私はなぜ――?
小さい頃、母はリアを捨てた。
『あんたといると不幸になる。』
小さい頃、叔母と父が妹と姉と新しい母を連れてきた。
『この人が新しい母さんだよ。』
『お前なんかよりずっと賢い。この子達を見習いな。』
魔法も独学で学び、執事も召喚した。
人一倍頑張って人よりは魔法を操れるようになった。
それでも独りだった。
味方はたった一人の執事だけだった。
だから求めた。
あの時手を差し伸べてくれた彼を。
彼が自分のもので自分は彼のもので。
独りじゃなくなった。
嬉しかった。
「もう、私は――なくていい!」
部屋に響くのは時計の進む音。
涙が零れた。
リアは涙を軽く拭い、隣で眠っているレクスを見た。
起きる気配はなく、規則的な呼吸音が聞こえてくる。
リアは幼いその寝顔に軽く笑みを浮かべ、すぐそばにあった手を握った。
「ごめんね、私はもう戻れない。残りはあと三日だから。だから……。」
痛むような顔をしたあと手を離すと、眠りについた。
朝、寝室で一日が始まった。
「リア、おはよー!!」
「レク、おはよう。本当に朝からいらっとするくらい元気ね。」
「でしょー?」
リアはいつも通りの嫌味を言うが、完全に流される。
「ホントにリアは朝が苦手だね。」
頭をぽんぽんと軽く撫でられリアは少し俯いた。
「リア?」
「…バカ……。」
「そういうとこが好きなくせに。」
リアは一つポカッと叩くと歩き出した。
ドアのところまで来ると思い出したかのように立ち止まった。
「今日は別のとこに遊びに行きたい。」
ドアに手をかけたままレクスを見つめる。
「ぷっふははははっ!!そっか、分かった。今日は仕事もないし、遊びに行こ。」
「うん!じゃ、準備してくる!」
リアは勢いよく出ていった。
すぐに
「わわっ!?ごめんなさい!」
そう言う声が聞こえてくる。
「リア様ったら、ずいぶんと嬉しそうなご様子ですね。」
「うん、今日は別のとこで遊ぶんだ。久しぶりだからじゃないかな。」
「まあ、そういうことでしたか。」
レクスはリアとぶつかりかけたであろう女中と、微笑ましい会話をしながら支度をするのだった。