男は次の天使の言葉に身構えた。
「今までの私が与えてきた幸運を全て破棄し
加えてこれから貴方に起こるはずだった幸運の一部を頂きます」
男に与えられた選択肢は2つ
このまま幸運が続く人生を
罪悪感と共に歩んで行くか
それともこれまでの幸運を破棄し
これからの幸運も一部破棄し
今までの腐った人生を歩むか
天使は男の周りをゆっくり歩きながら回り始めた。
「いいじゃん。自分さえ幸せになれれば」
「一生罪悪感が付きまとうけど」
「今までのくだらない人生に戻っちゃう?」
「いや、幸運が減っちゃうからもっと憂鬱な人生かぁ」
「どうする?目の前の美人と付き合っちゃう?」
「どうする?」
「どうする?」
「あはははは」
天使はクルクルクルクル男の周りを回り続ける。
「決めた」
男は静かに口を開いた。
「さぁ、ご決断を」
天使は手を差しのべた。
「私の手を握って貴方の意志を伝えて下さい」
男は天使の手を恐る恐る握った。
感触は紛れもなく若い女の手だった。
「幸運を・・・返そう」
天使はニッコリ笑ってみせた。
「ご利用ありがとうございました」
男は目を醒ました。
「なんだ、夢か・・・」
男は競馬場へと足を運んだ。
1万円を拾うこともなく
競馬場では予想がことごとく外れ
容姿がいい女性がいたが
もちろんそんな人間と住む世界など
違い過ぎていた。
ヨレヨレでボロボロのコートに身を包んだ男は
トボトボと競馬場から自宅への道を歩いていた。
男はすっかりクリスマスムードの街のネオンを眩しそうに眺めた。
そのネオンに包まれた世界の中に男は見つけた。
幸せそうにネオンを眺めながら
話を弾ませている1組の家族を