街は人々の活気に溢れ、色に満ちていた。
その中をリアは人にぶつからないように、足取り軽く、器用に潜り抜けながら歩いていく。
いつものドレスと違い、庶民的な服をひらひらさせて歩く姿は可愛かった。
長めのスカート、簡単な帽子、上着の上にストールをかけて、靴を履いて。
「ねえ、レク、あれは何?ああ、それとあっちのは?」
リアの子どもような質問にレクスは答えていく。
「あれは布を売ってるとこで、あっちは飴細工じゃないかな。」
「飴細工……?あれ、飴なの?」
「うん。リアは食べたことないの?」
リアはレクスを見上げた後一つ頷くと、無言で目を見続けた。
その様子が一段と可愛く思え堪らず額に口づけると、リアは頬を少し膨らませ朱に染めた。
「欲しいなら買ってあげる。」
いる、と問われリアは素直に頷いた。
「おばさん、それ、一つ頂戴。」
「おや、まあ、そこのお嬢ちゃんにかい?見たところ恋人同士かねぇ?」
気の良さそうな店のおばさんが、飴を吟味しながら言った。
「ちが…」
「そうですよ。つい最近結ばれたばかりで。素直じゃないんですよ、彼女。そこが可愛いんですがね。」
からかうように肩を寄せ頭を撫でられる。
それに唇を尖らせて、一発殴ると髪をすかれた。
「ラブラブだねぇ。」
そこで顔を思いっきりにやつかせたそのおばさんが、飴を渡してくれた。
レクスがお金を渡すのを見届ける。
「お幸せにね。」
最後におばさんがにこやかに言った言葉にリアは笑顔で応えたのだった。