「おい、弘!」
弘は僕の制止を振り切りスタスタと高校の中に入ってしまった。
仕方なしに僕も後を追って高校の中に入った。
しかし‥っていうかやっぱり学校の職員に呼び止められた。
「お前達、何やってんだ?」
ヤバいと思って振り返るとそこには見覚えのある顔が‥
「あれ‥ 司、伊島(イシマ)司くんでしょ?」
そう申し遅れましたが、僕の名前は伊島司。
「何してだ、ここで?」
話しかけたのは一つ上の先輩、田中孝(タナカタカシ)だった。
「先輩、こんなとこで何をされてるんですか?」
「俺は教師だよ、今年からここでお世話にな‥」
田中先輩は照れ臭そうに笑っていた。
さらに続けて
「それで司はどうして?
それにアイツは何者?」
先輩は挙動不審な弘を見ていた。
「ちょっとね、アイツ(弘)が久しぶりに高校に行きたいって言うから‥」
「ふーん、まぁ校舎の中とか体育館、あと部活の練習してる所には行くなよ!」
田中がそう言うと軽く会釈をして別れた。
別れ際、田中は僕に耳打ちしにきた。
「演劇部の部室なら鍵開いてるよ、俺、今‥演劇部の顧問もやってんだ。」
「ありがとう。」
僕は田中に一礼するとフラフラ歩いてる弘を掴んで演劇部の部室へ向かった。
「おい、何すんだ? どこへ連れていく、司?」
生徒の数人が挙動不審の弘を気にしていた。
相変わらず場の空気が読めない弘を引っ張って演劇部の部室まで連れていった。
「ここ、演劇部の部室じゃねぇか?」
弘はきょとんとした様子で僕を見ていた。
「あぁ、僕が入ってた部‥覚えているだろ?」
「そういやお前って演劇部だったよな、そうそうお前って女装可愛かったな。」
またニヤついた顔になったコイツ。
田中が言ってたとおり部室の鍵は開いていて中に入ると懐かしい匂いがした。
中に入ると帰宅部だった弘がドサドサと衣装部屋に向かって行った。
「おい弘、無茶苦茶するなよな。」
「演劇部の衣装ってマニアにはたまんないよな、コスプレとか出来るんでしょ?」
「あのなぁ〜、あくまで劇の中での衣装だよ。 コスプレ気分って‥何回はそういう感じで着たことあるけどな。」
「やっぱりあるやん。この中からどれか着てみてよ。 こういうのいいんじゃないか?」
差し出されたのはセーラー服だった。
「セーラー服じゃなくこっちかいいな。」