彼女に名前はありません。
親から与えられた姓名は、記号でしかなく、誰かにそれを呼ばれても、「おい、人間」と呼ばれるのと変わらず、彼女には気味の悪い事なのです。
彼女にとって、生きる事は嘘です。
同じ年頃の子のガールズトークも、道端の石が、石の癖にペチャクチャと喋っているようなものなのです。
そんな彼女だからといって、人生や人間の全てを否定し、疎んでいるわけではありません。
彼女は自分の容姿を、宝石が美しいのと同じに美しいと思っていました。
ただ哀しいかな、生きている事が間違いだったのです。
彼女はある年齢に達し、自分の美しさが衰えたと感じました。
あなたの回りにもいませんでしたか?
小さい頃は完璧だった顔のバランスが、大人になるにつれ鼻が大きくなりすぎたり、若くからシワや白髪が出てしまったりした子供が。
大人になる事が恐ろしくなった彼女は、闇サイトに依頼を出しました。
『私のデザイン通りに私を加工してくれる方を探しています。もし、加工して気に入ったなら、そのまま差し上げます。』
彼女は、返信の中から1人の男を選びました。
男が彼女に指定された場所へ行くと、段ボールの中に少女が死んでいました。
傷一つない、美しい死体でした。
他には図面と、装飾に使われる材料が入っていました。
男は車で自宅に持ち帰り、興奮を抑えながら、作業に取りかかりました。
少女の首を体から切り離し、美しく加工された箱の中に納めました。
胴体から腕と足を切り離し、内臓を取り出してからポールに挿して、薄いレースのドレスを着せました。
腕は交差させ、指輪とリボンで飾りました。
足は少女の顔の回りを囲むように一緒に箱に納めました。
美しい足と、少女の唇と、それはアンバランスでもあり、エロチックでもありました。
全ての作業が終わり、男は指先で少女の体を愛撫しました。
舌で、唇で、歯で少女を貪りました。
何てこの上もない幸福、この上もない悦楽!
その頂点に達した時、部屋の扉が開きました。
キィィ…
「下手ね。あなたには、あげない。」
翌日、ある女が、ネットで知り合った相手の指定した場所へ行くと、大きな段ボールの中に男が死んでいました。
傷一つない、美しい死体でした。
女はそれを車で自宅に持ち帰りました。