「サラさん、茜さん五番テーブルにお願いします」
「は〜い!」義則達との会話の余韻も冷めぬうちに、美紀と美佳は、考太の案内で、指定されたテーブルに向かった。
「よろしくお願いしま〜す」
挨拶を終えた2人は、客の顔をみて驚いた。
「あ!…」
「ん?どうかしたの?」
「あ…いえすみません。失礼しま〜す」
美紀は、我に帰り着席した。
美佳も、なんとか平静を装い着席した。
そう、そこにいた2人は、さっきまで、義則達との会話に出ていた、佐藤琢也と原山俊作本人達だった。
「はじめまして。今日は、仕事帰りですか?」
「うん…まあ、就職祝いとゆうか…前の仕事から、なんとか新しい仕事が見つかったんで」
「そうなんですか〜。おめでとうございます。でも、なんでこのお店を選んでいただけたんですか?
数ある店のなかで」
「うーん…正直言うと、申し訳ないんだけど…」
琢也は、少し言いにくそうにしていた。
それを察して、美紀は言った。
「構わないですよ。おっしゃっていただいて」
「そう…まあ、予算的なこともあるけど、前に知り合いに聞いてね…この店に行った知り合いが、君達のことを話してたんだよね」
「私達のこと?」
「うん。正直に話してくれたって。今までのこととか。…その、お店を辞めるか辞めないか、これからのことを、どうしようか悩んでた時に、ある人達との出逢いで変われたって…
知り合いも君達との一時が楽しかったって言っててね…」
「そうなんですか…じゃあ指名していただいたんですか?」
「そう。是非とも会ってみたかったんだよね。君達に。俺達のこれからのためにもね」
「これからのため?ですか?」
「そう。俺達は、つい最近まで、大きな挫折を味わって、なんとか、立ち直ったんだよね」
俊作も切り出した。
「だからってわけじゃないけど、一度この店に来たかったし、君達と話すことで、何か変われるんじゃないかって思ってね」
「そんな…私達、そんなだいそれた、人間じゃないですよ」
美佳は、恐縮した。 「迷惑だったらごめんなさい」
謝る琢也に、美紀は首を振った。
「いえ…私達で良かったら、どうぞ」