昔昔の事じゃった。
裏の山にな、巨大な龍が住んでおったそうな。
龍は、悪い事をする人を食らい、雷を鳴らし、それは恐ろしい存在だったんだと。
村人達は、大変恐れてな。
神社を建立して、龍の怒りを鎮めるべく、祈ったんだと。
寝ながら聴いていた子供が…
「でも、悪い事をしなければ龍は暴れないんでしょ。」
その通りじゃ。
歳老いた父は、話の続きを始めた。
人の心は弱いものじゃ。
何時でも、正義感を持たなくてはならんのじゃ。
「じゃあ、爺ちゃんって悪人何だね。」
とんでもない事を言うと龍が食べに来るぞ。
「でも…」
「爺ちゃんの背中に龍が食い付いて居るじゃん。」
此れは、刺青じゃ。悪い事なんか…
隣の部屋から、若い妾の笑い声が聞こえてきた。
「もう少しで、寝かし付けるから〜」
外では、雷が鳴り、月明かりに、巨大な影が横ぎって行った。