サイコパス診断って有名ですよね。
あの中には、実際に起こった事件を元にしているものもあるらしいですね。
犯罪者には犯罪者の心理がわかる、という。
あるクラスの中心にはいつもAという人がいて、クラスでサイコパスの話題で盛り上がった際に、彼もその診断を受けました。
Aは、全問不正解でした。
「難しいね。けど異常者を見つけるっていうより、推理力を試されてるみたいだ。」
皆はAの言う事になるほど、確かにそうかも、などと相槌をうち、誰かが、
「Aは頭はいいけど、推理は出来ないんだな」
と、本当に素直に、ただ意外だったというように言いました。
次の日、近所で女の子が殺されました。
警察は数日かかって犯人を捜し、現場近くをうろついていたAを見つけました。
警察へ行くとAは、自分がやったと、むしろ誇らしげに供述しました。
犯行前日にサイコパス診断をやっていた事にふれ、
「俺には答えが全部わかっていた。だけど普通の、馬鹿な奴らと同じふりをしていたから、わざと全部外したんだ。
皆があんまりアッサリ騙されるから、堪らなくなって女の子を殺してみた。」
と述べたそうです。
サイコパスの特徴に、『病的な嘘つき』という項目があります。
実際、Aは異常者でしょう。
誰かが、「Aは推理が出来ない」とこぼした時のAの鋭い目を、私は見てしまいました。
しかし、もう1つ、私しか知らない事があります。
Aは犯行があった時間帯、漫画喫茶にいたのです。
私のバイトしている満喫の監視カメラはダミーで、私しかAと接していないのですが(私は目立たない人間なのでAは気づかなかったようです)Aは確かにその時間、自分のブースに閉じこもっていました。
私は、警察が来たら警察に話そうと思っていましたが、彼らは私のところまで来ませんでした。
かわりに『彼』が来ました。
彼は私に口止めしました。
最初は彼がAを憎んではめようとしているのかと思いましたが、彼は秘密を知っている私にさえ、何の悪意も持っていませんでした。
単に、殺意がありました。
どうして女の子を殺したの?
そう尋ねると、彼は、
「女の子は大人と違って天国へ行けるから。」
だから、躊躇わずに殺せるそうです。
私は、死んだら地獄で会うかも知れないので、微妙に嫌なんだそうです。
私はいい人間でいたくないので、Aの事を黙っています。