悪魔の天使 (54)

暁 沙那 2012-01-17投稿
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「ね?ほら、もういいでしょ?」

ルカは少し子供っぽい笑みを浮かべて、首を傾げた。
そして、腕を絡めると歩き出しそうとする。
しかし、レクスは動かなかった。

「ん、何?」

上目にレクスを見上げ問うと彼は何も言わずに歩き出した。

「――っ!?ちょっ、ディル!?」
「残念だけど俺は君のディルじゃない。レクスだよ。」
「――っ!!やだぁっ!!ねえ!ねえってば!!」

喚くルカを半ば無理矢理連れて歩く。

(流石にうるさい!!)

そう思い、腕を離し引き寄せる。
彼女の唇に自分のそれを重ねた。

「んんっ!?」

驚くルカをよそに繋がりを深くすると相手から求めてきた。

「ん…ふぁ……。ん…ぁ…ディル……。」

リアの甘い声で他の男の名を呼ぶ。
それが苛ついた。
だから突き放すようにしてルカを離す。

「ほら、行くよ。」

ルカ、と呼ぶと彼女は嬉しそうに笑った。

(ごめんね、リア。)

「ルカ」と呼んだその瞬間から「リア」を否定してしまったような気がして、「リア」の反応が怖くて謝る。



――リア、どこにいる?



「…レク……?」

真っ暗な闇の中で愛しい人を呼んだ。
しかし、何も返ってはこない。

「ルカ…どうしてこんなこと。」

小さく呟くと声が聞こえた。

「ルカ。愛している。泣かないで。恨むのならこの裏切り者を恨んで。」
「…ディル……?」

レクスによく似た彼、ディルはリアを認めると抱き寄せた。
最初こそ驚いて声も出なかったが、はっと我にかえると勢い良く押し返そうとした。

「ごめん。『リア』。」
「――っ!?」

彼は『ディル』ではなくリアの知っている『レクス』だった。

「…レク……。」

彼に手を伸ばして顔に触れる。
笑顔、声、仕草。
全てリアの知っている、大好きな…

「レク……!」

でも、違和感があった。

『ふぅん。リアはMなんだ。安心しなよ。いじめはしない。焦らすだけだよ。』
彼の時々見せる、少しからかうような笑み。

(優しいけど私が欲しいのは違う。レクはもっと意地悪……。)

「…そっか。じゃあ、君が『ルカ』になってくれる?」

突然引き寄せられた。
荒々しい口づけにリアは反応が遅れる。
相手と相手から送り込まれた異物の侵入を許してしまった。

「さあ、リア、ルカになろう。」

ディルがくすっと笑う。
意識が、リアの心が『眠った』。



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