『室内を暗くして、窓の外を見て下さい。
窓の外と窓枠を目に焼きつけて下さい。
焼きつけたら目を閉じて下さい。
窓枠の向こうに、目を閉じる前と違うものが映ったら、その窓は霊道で、あなたは霊感があります。』
私とYはクラスに残ってた他数人と、放課後、この霊感テストをしたのね。
殆んどの子が、窓の外がぼんやり瞼の裏に浮かんだり、上手く焼きつけられなくてただ真っ暗に見えたってだけ。
私達ががっかり半分、安堵が半分で溜め息をついた時、Yだけが「ひっ!?」と短い悲鳴をあげたの。
「向かいの校舎の屋上で、誰かわからないけれど、女の子が手を振ってた」って…
でも、考えてみて。
電球でやるとよくわかるけど、あのやり方は光を焼きつけるだけで、瞼の裏に映る光景は、良くて薄ぼんやりとした写真って感じのはずでしょ?
動くわけないじゃない。
Yは地味だけど、想像力が豊かで、ちょっと思い込みやすい面があったのね。
オカルトも興味あったみたいだったし。
だから私達も、Yの想像だろ、てあんまり相手しなかったわけ。
そうしたらYったらムキになって…
Yは美術部だったんだけど、数日粘って、屋上から町の風景を描きたい、って名目で、立ち入り禁止だった屋上に入る許可をとったの。
Yは屋上から、教室にたまってた私達に手を振ったわ。
柵に身を乗り出して。
どうなったと思う?
柵が外れて、Yはバランスを崩して頭から下のアスファルトに墜ちた。
即死ではなくて、救急車が来るまでYの体は痙攣してた。
目を閉じてモノを見る事を、心眼とか透視とか言うそうね。
見えるのは未来だったり、過去だったり、因縁や霊といったものだったり…
Yが見たのは自分の未来だったのかしら、それとも…?
Yと同じ部の子で、Yが落ちる前、最期に言った言葉を聞いた子がいるの。
でも私は、それを言ったのは本当にYだったのかなって…
とにかく聞いた瞬間、鳥肌がたったわ。
『やっと、来た』