-6年前-
「えー、ただいま入った情報によりますと……」
ラジオか何かだろうか、緊張感のあるアナウンサーの声が遠くから聞こえる
その声で目を覚ましてからどれほど経ったろうか
俺は冷たい鉄に頬をつけ、倒れていた
反対の頬はむしろ熱い
2、3回瞬きをし、やっと状況を把握する
そう、俺は家族と地下鉄に乗り、事故に巻き込まれたのだ
家族とは父さんと母さん、そして2つ年上で中学2年生の兄さんだ
そうだ、皆は……
俺は重い身体をなんとか起こし、辺りを見渡す
「うぅ……」
すると近くに兄さんが倒れていた
怪我は軽いようだ
「兄さん!父さんと母さんは!?」
尋ねると兄さんは震える指で俺の右側を差す
「あっ…ちの、が……れき」
「分かった!ありがとう!」
そう言って瓦礫に近づき、注意深く捜す
「あ!……あ?」
俺は見つけた
いや、見つけてしまった
「あ、あぁ……」
ほとんど形を留めていない赤い<ソレ>
唯一見える部分は、父さんと母さんの顔に似ていた
「あ゙あぁぁぁぁぁぁぁ!!」
-現在-
「よう神那、この前はよくもやってくれたなぁ?」
俺の目の前に立つガラの悪い男は足立大輔
この学校の番長…"だった"男だ
「喧嘩を吹っかけてきたのはお前だろ?」
俺はついこの間、まだ番長だった大輔に喧嘩を売られ、勝ってしまったのだ
「うるせぇ!ぶっ飛ばしてやる!」
流石に問題を起こしたくはないので、俺は穏やかに告げる
「なら今日の放課後、アリーナで決着をつけようじゃないか」
納得した大輔の背中を見送り、俺は溜息をつく
「またあぁいう奴に絡まれるのかよ」
3xxx年、革命的な技術発達により、世界は急成長していた
まず全福祉の無償化
全ての国が法律に記している
次に教育の変化
喧嘩することも子供の成長を促すという理由で、毎日放課後には、体育館で<アリーナ>と呼ばれる決闘を自由に行える
この制度も全ての国が法律によって学校に義務づけている