『街角Box
ご自由にご利用下さい。
相談事を入れておくと、誰かが答えてくれるかも!?』
誰が置いたのかわからない、そんな箱がいつも利用する無人駅の構内に、いつの間にかあった。
見た目は大きめの金庫のようだが、誰でも開けられるようになっている。
こんな箱に相談を入れる奴がいるのか気になって、扉を薄く開いてみた。
案の定、空である。
このままではつまらないので、相談事を入れてみる事にした。
『モテません。どうすればモテますか?』
次の日、箱を覗いてみると、自分が入れた紙と別の紙が入っていた。
小学生が書いたのかと思うほど汚い字で、次のように書かれていた。
『手をつかえば、いいとおもいます。』
思わずフいてしまった。
今度は誰かからの相談に答える方に回りたかったので、相談でなくメッセージを入れてみた。
『面白い解答ありがとうございました。誰か、何か困っている事はないですか?』
それに対しては、何の解答もなかった。
肩を落として、その日から数日は箱を素通りするようになった。
しばらくするとやっぱり気になって、箱の中を覗いてみた。
いつから入っていたのか、赤い紙切れが一枚入っていた。
『 タ スケ イイ?』
ひどく掠れて切れ切れで、読みにくいが、助けて欲しいのだろうか…?
『困っているんですね。いいですよ。』
その日の晩、何やら異常を感じて目が覚めた。
焦げ臭い匂いがして、寝室の扉を開けると、炎と煙が一気に押し寄せてきた。
命からがら窓から飛び降りたものの、両足の骨にひびが入り、救急車で病院に運ばれた。
もっと軽傷に見えていたのか、救急隊員がその時
「え、運ぶんですか?」
と反応をしていたのにはイラついた。
翌日警察だという男が来て、犯人を早く捕まえてくれ、と頼むと、真顔でこう言った。
「あなた、良いって書いたじゃないですか」
アナタヲモヤスケドイイ?
「あなたには虚偽記載の容疑がかかっています」
警察はそう付け加えた。
逃げる心配がないので、手錠はかけません、とも。
そう言えばこの病室には、松葉杖も車椅子もないな。