略奪 3

アフリカ 2012-02-07投稿
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繁華街を抜けた頃には美佳の姿は無かった。
カラカラに成った喉の辺りを掌で擦ると不快な汗が指先に絡みついた。
ポケットに手を突っ込み裸の一萬円札数枚を握り締める。
穢れた金を淳に貰った財布に入れる事が出来なかったからだが今と成ってはどうでも良かった。
私は歩きながら、最初に目についたスティール製のドアを押し開いた。
薄暗い店内。
静かに流れているjazzが何故か心地よかった。
『何を出しますか?』
止まり木の一番奥に腰掛けると初老の男がグラスを磨きながら呟いた。
制服姿の私は完全に場違いだが、他に客が居ない事と男の不思議な存在感が私の尖った心を落ち着つかせた。
『甘くないコーラ有ります?』
男を覗き込みながら訊いた。
『有りますよ』
男は磨いたグラスをカウンターに置くと私を見ずに準備した飲み物を差し出す。
『もう暫くしたら、ギターを弾く子が来るから聴いていくと良い』
それだけ呟くと、またグラスを磨き出した。
ドアが押し開かれるまで、私は男が磨くグラスを食い入る様に眺めていた。

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