次の日、澪は何時も通りむかえに来てくれた。その時の表情が何時もと何ら変わりなくって安心した。
「ねえ・・・」
昨日はどうしたのって訊きたかった。
「何」
けど、何となく嫌だったので訊かなかった。
「やっぱいいや」
「そう・・・」
澪は不思議な顔をしてた。少しだけ子供じみた顔でなんだか笑えた。
そんな私を見て澪もつられて微笑んでた。なんだか幸せだ、と思った。
「澪」
「何、風香?」
微笑んだまま私の名前を呼んでくれたのがまた嬉しくって少し照れた。
「幸せだね、すっごく」
朝からこんなに幸せな気分になれるのは澪のおかげだと思う。何の変哲もないただの学校へ行くのはつまんないけど、澪に会えるならつまらなくってもいい、最近そう思うことがよくある。
「俺も・・・スッゲェ、幸せだよ」
照れくさいのか肩をすくめて澪はそう言ってくれた。
「何時までも、続くといいね」
私は澪にそう言った。そう、本当に何時までも何時までもこの幸せがずっっっと続くといいなって思ったから。
「・・・・・そう、だな・・・」
でも、私がそう言ったら澪は急に冷たくなった。笑い方も冷たかった。
「澪・・・?」
嫌な感じがしたので、名前を呼んだら消えそうな声しか出なかった。
澪は私が名前を呼んだら、また何時ものように優しく笑って
「何、早く行こう?」
と、声をかけてくれた。その時は、やっぱり気のせいだったのかもしれないと思って私もあんまし深く知ろうとはしなかった。
そう言えば こんな言葉がある
『虎は死して皮をとどめ 人は死して名を残す』
きっと人は 死ぬ前に 誰かのために『名』を残すに違いない