澪が怖いってゆった。
「怖いって・・・?」
私が訊くと、苦笑いをしたまま「うん」と返事を返した。
「半年くらい前から、もうダメだって聞かされてた」
澪の話し方があまりにも静かで落ち着いてたから、やっぱり悔しかった。さっきもお医者さんから聞かされてたんだけど、今日を抜いてあと3日、それしか澪はこっちの世にはいないのだと。
「お、俺さ、初めてお前んとこ見たときから他の女なんて眼中になくって、お前に告ろう告ろうって思っててさ。決心したのがあの日11月1日なんだ」
澪が明るく振る舞えば振る舞うほど私は悔しくなった。
「・・・・俺が、何で風香に言わなかったか、分かる?」
澪は手を顔の上に乗せた。
私は首を振った。内心、信じてもらってないような気はしていたがあえて口にしなかった。悔しいという気持ちは変わらない。
「胸煩い、なんて・・・知ったら、俺んとこからいなくなるような気がしたんだ・・・だから・・・」
そうだ、バリバリスポーツなんかやってる澪の体は心臓がもうだめなんだった。
「・・・・ないよ・・・」
「何て?」
私は本当に悔しくてならない。澪の気持ちも知らないで、当たり前のように未来がある見たいに言って、最低じゃない・・・。
そう考えたら胸が熱くなって、どうしようもないくらい怖くなった。
「風、か・・・?」
「そんなことない!私が、何でいなくならなきゃいけないの!?」
悔しくって、怖くって、悲しくって、本当はもっと伝いたいことがある。
その、言葉に出来ない感情と苦しさを分け合って共感したかった。でも、口から出るのはそんな言葉じゃなくって、きつい言葉だった。
「何で一人で抱え込むのっ?」
違う。
「人の気も知らないで、よくゆうよ!」
違くて、
「澪は私のこと何とも思ってないんでしょ!??」
言いたいことが言えなくて、また悔しくなった。悔しくて、苦しくて、目頭が熱くなった。
温かい透明な液体がゆっくり、私の頬を伝ってベットに落ちるのが分かった。
「風香・・・!」
束の間、私は何があったのか分からなかった。でもたしかなことは、澪がふれあうほどに近くにいてくれたことだけだった。
「何とも思って無くなんか無いっ、俺は、風香がイッチバン好きだもん世界の誰よりも、風香を・・・・」
澪がそう言ったとき、やっと澪に抱きしめられてることが分かった。