部屋についた。
リアの身体をしたルカをベッドに座らせる。
先程からうっすらと笑みを浮かべているルカに警戒しながら話しかけた。
「リアはどこ?リアをどうしたの?」
「どうもしてないわよ?私はね。ただ……。」
そこまで言うと笑みを深めた。
「あの子にどうかしたのは、貴方かもよ?私は何もしてない。」
レクスが礼儀として出したお菓子に口をつけた。
しかし、お茶には手を出さない。
「それ要らなかった?」
「それ…ああ、お茶?あの子も苦手だったでしょう?紅茶。」
リアが嫌いなものはルカも嫌い。
リアが好きなものはルカも好き。
「やっぱりルカはリアの、いや、リアはルカの転生。俺とディルがそうなように。」
「ご名答!」
ルカは少しはしゃいで言った。
「そうよ。リアは私の生まれ変わり。だから貴方とで会うのは必然だった。さあ、いい加減貴方も消えて?邪魔なのよ。」
愛らしい冷酷な笑顔でゆるゆると右手を挙げ、レクスの胸の辺りでピタッと止めた。
「死んで?」
今までに見たことのないような艶めいた笑みで
彼女はそう言った。
母が死んだ。
目の前で。
父も姉も使用人達も大事にしてくれたけど
寂しさは消えなかった。
恐怖も残っていた。
死への恐怖。
まだ
死にたくない。
いや、死ねない。
だって、まだ、
パァンっ
「――っ!?」
ルカの手を片方の手で払うようにして流し、手首を掴む。
それを背中に持っていき、前に押し倒す。
「痛い!痛い痛い痛いっ!!離してぇ!!」
「大人しくして。そうしたら痛くない。」
「いやぁぁ……。」
力なくぐったりとベッドに埋もれるルカに、覆い被さるようにして耳元に囁いた。
「リアはどうしたら返してくれる?」
「っ…ふぇっ…っく…ん…っく……。」
嗚咽を繰り返すだけでルカは何も答えない。
レクスは一つ溜め息を吐くと力を緩めた。
「甘いね。」
緩めた直後聞こえた声に力を入れようとするが遅かった。
脇腹に重い蹴りが入った。
そのあとすぐに体を反転さし同じ方の足で頭部を蹴った。
先程と変わらない重さに一瞬くらっとしたが堪える。
「いきなりあんなことするなんて酷い!」
ルカは目に涙を浮かべて部屋を出た。
最後に笑みを残して。
その笑みにひどい悪寒を感じ、咄嗟に後を追おうとするがもうルカはいなかった。