仕事、居酒屋、オバケと会話、睡眠。毎日がその繰り返しだった。
しかし、まるっきり同じかというと、そうでもなかった。
その日、珍しくオバケは今の生活について語った。
「オレはミュージシャンだ。え?違う違う。表舞台には滅多にでないさ。所謂、スタジオミュージシャンってやつだ。それも、かなりワガママな」
時計の針は22時少し前を指していた。
オバケの前には日本酒、僕の前にはビール。
オバケの話によると、彼の仕事はギターを弾くこと。そして、10〜20時の間しか働かないらしい。徹夜なんて、死んでもやらない。そういった意味でワガママなんだそうだ。
それに、善くも悪くも、彼のプレイには癖があるのだと。
「久しぶりだ」オバケは日本酒をゴクリと飲んだ。「今の自分の話をするなんて、かなり久しぶりだよ」
「したいなら、いつでもすればいい」
「いや、そういうんじゃないんだ」
よくわからない音楽が流れていた。
いつものように、しまいには客は僕らだけになった。
「うちで飲み直さないか」オバケが言った。「もちろん、あんたが良ければ、だけど」
「なかなかいい考えだ」
こうして僕らは店からでた。夜風がやけに気持ち良かった。