さて。私を見つけられるかしら。
あの人、ディルの転生したレクスに私の魔法が破られてから私は急いで部屋を出た。
あの儀式を再開するために。
五十年ほど前、私とディルは出会った。
『この子はスロイスト家の一人娘のルカです。』
『……初めまして……。』
次女の後ろから少し覗いてその少年を見た。
『初めまして、ルカ。ディエル・アイロウドです。アイロウド家の次男。君の婚約者になるのかな。』
『こんやくしゃ……?』
六歳になった彼より二つ年下だった私は、まだそんなことは分からずに、聞き返すことしかできなかった。
そこからまたディルに会うのは12年後。
『久しぶり、ルカ。覚えてる?俺のこと。』
大きくなった彼を前にして私は、
『ごめんなさい、どちら様でしたっけ?』
あー、えっと、たしか笑われたなー……。
『ははっ!!聞いたか!?アルベード!どちら様だって。』
『当たり前だろ、前会ったのは12年も前だぞ。』
『あの……。』
『ああ、俺のバカな主が失礼したな、ルカ嬢。』
これで従者になっていることに驚いた。
アルベードとかいう従者らしくない従者が髪を一房掬い口づけた。
『っ!?おい、アルベード!?』
『ルカ嬢、また後程お茶でも如何でしょう?我が主の馬鹿げた遊びにお付き合いくださったお礼とお詫びに。』
『……。私、紅茶は苦手なの。甘いミルクがいいな。』
『はい。』
その悪戯をしたのがディルの命令を受けたアルベードで、アルベードがディルだった。
彼らの演技の上手さに驚いたわ。
演技をする、上手くならざるをえなかったわけもくだらなかった。
『主人が言うには自分の婚約者がどういう反応をするのか見てみたかったから。きっと可愛いのだろう、と。』
寡黙そうな人なのに、凄かった。
既に妻と子供がおり、バカをしまくっているとディルが面白そうに話してくれた。
あの教会に着いた。
私が儀式に失敗したあの教会。
つい、笑みが零れた。
あの時と同じような他から見ると慈しんでいるような笑みが。
「次は必ず殺してあげる。待っててね、ディル。」
更に笑みが深まった。