「お前なんか
産まなければよかった」
初めは
聞かなかった事にした。
二回目は
聞こえない振りをした。
三回目は
刺さった。
ぐさりと胸に。
それ以降は
慣れた。
言葉は凶器で
狂気な言葉だった。
痛ってーな。
僕達はアイツらの事を
勝手に猫と呼んでいる。
真っ黒なベンツを
転がしているアイツらを。
もしムイムイが兎なら
アイツらは
鮫か
或いは
アリスだ。
イナバの?
不思議の国の?
まあ何処から来たか
なんて
死ぬほどどうでもいいし
死んでからもどうでもいいんだけど。
「あのタイヤ
超かてーんだけど」
エンジン音に
負けないように
僕は声を張り上げる。
にゃんにゃん
後ろのベンツからは
盛んに猫が哭いている。
「着ぐるみを狙えよ」
ムイムイが応えた。
「誰も着ぐるみなんて
着てないんだけど」
「テメーの目は節穴か。
どいつもこいつも
あっちもこっちも
着ぐるみ
ばっかじゃねーか!」