佐和子が美奈子を連れて帰って来た。散らかったリビングに入るや否や、振り上がる手が美奈子を襲う。倒れ込んだ美奈子の髪を佐和子が無造作に掴み上げる。容赦なく浴びせる罵声に、泣き叫ぶ声が入り混じる。 「おまえはなんでそんなにできそこないなの!」 「ごめんなさいお母さんごめんなさい…」 振り飛ばされた美奈子がタンスにぶつかった衝撃で、毛を逆なでたまま床に飛び降りたミーナと佐和子の目が合った。 その後に訪れた暗闇。
「おはようございます」 今朝も三上さんの変わらない挨拶。 「おはようございます、今日もいい天気ですね」 「あぁ、そう言えばミーナちゃんどうしちゃったのお目々。かわいそうにねぇ、キレイだったのに」 「ええ、野良犬か何かに襲われたみたいで。怖いですわ」 「本当ね、気をつけなくちゃね。じゃ、行ってらっしゃい美奈子ちゃん」 「…行ってきます」