寒いなぁ‥‥。
冬の夜はひどく身体に堪えた。
月明かりの当たるベンチに座り夜空を眺めた。
星が綺麗だった。
どのくらい時間が経ったのだろう。
辺りがうっすら明るくなってきた。
寒さも限界だった。
そろそろ帰ろう。
ベンチから離れ歩きだそうとした時、
「ニャー‥。」
後ろから猫の声が聞こえた。
振りかえると真っ黒の猫がこちらを見ていた。
私が歩み寄ると、黒猫は逃げることなく私に擦り寄ってきた。
野良猫なのか、身体が汚れていた。
私の首元で光る青い宝石を黒猫は見つめていた。
『これは太一がくれた物だからお前にはあげないよ。』
「ニャー‥、 ニャー‥」
私の足元でねだるように鳴いていた。
太一‥‥、そろそろ帰らないと、心配かけちゃう。
そんなことを思い、黒猫とじゃれあっていると
「ミサキー?ミサキー?」
公園の入り口から太一が走ってきた。
私を探している様だった。
『太一!!』
私の声で太一は私に気付き、ホッとした様子を見せゆっくりこちらに歩いてきた。
私も太一に近づいた。
黒猫もついてきた。
「ごめんな、友達は帰ったから。」
『なんで太一が謝るの?勝手に家を出たのは私なのに‥。』
太一は私を抱き締めた。
「一緒に帰ろう。」
彼は優しく微笑んだ。
『うん、』
そう私が答えると足元で黒猫が鳴いた。
「ニャー、」
彼は黒猫に気付き、
「猫?こいつと遊んでたのか?」
笑って彼は言った。
黒猫は相変わらず足元で鳴いていた。
「アパートは猫、飼えないんだ。ごめんな。さ、帰るぞミサキ!」
『うん、じゃーね黒猫。』
黒猫は、公園を出てもついてきたが家につく頃にはいなくなっていた。