あれから何日か経ったある夜のこと。
外から猫の鳴き声が聞こえた。
「ニャー、ニャー、」
鳴きやむようすがなかったため、しかたなく身体を起こした。
横で寝ている太一を起こさないようにそっとベッドから降りた。
ベランダに出て下を見るとあの黒猫だった。
ついてきちゃったんだ‥。
黒猫は私に気付いたようで、こちらを見ながら鳴いていた。
「ニャー、ニャー、」
私は部屋に戻ったが鳴き止まなかった。
それから黒猫は毎晩来るようになった。
太一も気付いたようで
「お前が相手してやったから、ついてきちゃったんだぞ。」
と、笑いながらつぶやいていた。
太一が仕事に行ったある日、また外で猫が鳴いていた。
ベランダに出て下を見るとやはりあの黒猫だった。
昼間なのに‥‥珍しい。
私は部屋を出て下におりた。
黒猫は嬉しそうに私に擦り寄ってきた。
かわいい奴。
黒猫は雄で見たところ2、3歳だった。
瞳は、金色だった。
この間は汚れていたが、今日は綺麗だった。
黒い毛並みが美しかった。
時間も忘れて黒猫と遊んでいると太一が帰ってきた。
「ミサキ!なに、こいつと遊んでんだよ。また毎晩鳴かれちゃ、たまらないぞ。」
少し、太一は怒っていた。
たしかに‥‥。
これからは、この子が鳴いててもかまってはいけない。
飼えないんだからしょうがない。
そう心に決めて太一に謝った。
『ごめんなさい、』
「ほら、寒いし帰るぞ。」
太一は、黒猫にシッシッとやってアパートに入って行った。
黒猫は寂しそうだった。
ごめんね、黒猫。
私は太一についていった。