僕の通う学校で男子生徒が一人、命を落とした。
墜とした、と言った方が
的確かもしれない。
彼は墜落したのだ。
学校の屋上から。
彼の亡骸の近くには、古くなって錆びついた事故防止用のフェンスが転がっていた。
彼の死は不運な事故として扱われた。
馬鹿な大人たちは、月並みのように責任の押し付け合い。
どうやら学校側に非があるということで、話が落ち着きそうだった。
しかし、彼の死には不思議な点が二つかあった。
一つ目は彼の死亡推定時刻。
彼は夜中の一時頃に息を引き取ったのだ。
二つ目は彼の身体的な事だった。
彼は盲目だったのだ。
盲目の少年が夜中に、学校の屋上から墜落した。
何とも不思議な事ではあるが、彼の母にも警察にも、何故彼がそんな時間にそんな場所にいたのか、説明する事が出来なかった。
結局彼の死は事故死とされ、学校の屋上は閉鎖された。
「そのせいで俺達が屋上に入れねぇじゃねーか!」
隣に座っている宮城春樹がぼやく。
何故僕がこんなに長々と、少年の死について話していたのかというと、理由はここにある。
僕達の屋上が閉鎖され、封鎖されてしまった。
この事が、この事こそが、僕達にとっての唯一の問題だった。
まあつまりは、
「事故の真相暴いて、屋上を取り戻すぞ!」
という事だった。