松山真津子はまた、溜め息を吐いた。
松山真津子は実はもう78歳であった。
しかし、結婚はしていないし、身内で
頼れるような人はいない。そこそこ貯金はあったのだが、今は年金しかない。やることはない、が趣味をする余裕がなかった。金銭的に。また人間関係的に。
また、春が来てしまった……。いっそのこと何もせずに餓死してしまおうかとも思った。…しかしぼーっとしていても尿意を感じ、汚すのは嫌だしトイレで死ぬのも……という理由であっけなく中止となった。逆に散歩を趣味にしようと思い、出かけるようになった。道端で倒れた。
が、人通りが少ないところなのか2時間後に目が覚めても何も変わらない風景で、やめた。
窓からぼーっと、外を見た。
塀があるせいで
庭から先は見えない。
…庭と言うのかもわからない程小さいが。
♪♪♪♪♪
急に、電話が鳴った。
取りに行くのが面倒臭い。
が、そんなことで恨まれたら嫌だし
相手様に迷惑は掛けたくない。
…もしもし…。
…俺、俺だよ。
…は?どちら様ですか?
…俺だけど?
…私は俺と言うような方は最近お話ししていませんので。すみません。どなた様…
俺だって!!何言ってるんだよ!
なっちゃん!!
…松山ですが。
名字じゃないし。それになっちゃんは松山奈津子じゃん!本当に分からないの?
…あぁ。もうせっかく今78歳の松山真津子の気分に浸ってたのに…。
…へっ?ああ何かごめん………???
誰、それ?
…さあ。知らない。
何となく今思い付いたんだよ。
…じゃあ、俺今から80歳の田辺大吉やる。
やらなくてもいいよ。もういい。