宇宙人の提案

涼太 2012-06-04投稿
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「星が見えてきたぞ」

その声を聞いて、宇宙船の窓から外を覗くと、暗闇の中から青い星が近づいてきているのが見えた。

「文明のある星なのか?」

俺が誰にともなく尋ねると、

「待ってくれ。今、データベースにアクセスしてる。……あった。太陽系の第三惑星、地球。文明はあるようだが、まだあまり発達はしてないみたいだ」

液晶パネルに表示された文字を船員が読み上げる。

「この星ならいいだろう」

船長が頷いた。続いて通信士に指示する。

「この星の言語を解析して、コンタクトをとれ」

通信士は相槌を打つと、通信機に向き直った。
先程まで静寂に包まれていた船内が、徐々に慌ただしくなり始めた。

「アメリカ政府が、通信に応じました」

別の通信士が報告する。
他の船員の話を聞くと、アメリカというのは地球で1、2を争う大国らしい。
船長は再び冷静に指示を下す。

「着陸許可を要請しろ。他の船員は、着陸に備えるんだ」

船員たちが、慌てて動き始める。

「着陸許可取れました」

「よし、着陸しろ」

操縦士に速やかに指示をする船長。流石はベテランだ。

「パニックを防ぐため、人目のつかないところに着陸してほしいようです」

「望遠カメラで人気の無さそうなところを探せ」

「ありました。着陸体制に入ります」


そんなこんなでようやく着陸することができた。地面を踏むのはかなり久しぶりのことで、遥か彼方の自分の星を思い出し、懐かしんだ。

宇宙船の周りには既に、数人の地球人たちが並んで出迎えていた。身体は俺たちよりも少し小さい。頭は更に小さいので、あまり知的には見えなかった。

「地球へようこそ。私はアメリカ空軍のリック=オルソン大佐です」

「初めまして、オルソン大佐」

先程解析したこの国の言語―地球では英語と言うらしい―を船長が流暢に喋りながら、手を伸ばすと、大佐は驚きながらも笑顔で握手に応じた。

「私たちは、あなた方に私たちの星の技術を教えに来たのです」

大佐は船長が言った言葉を訝しんでいる様子で尋ねた。

「それだけのためにわざわざ?」

「勿論、タダでとはいきません。それらを駆使して、私たちの望む物を造り、輸出していただきたい。というのも、私たちの星は今、資源の枯渇に苦しんでいるからです」

「なるほど、私たちの技術が進歩すれば、私たちの星であなた方の必要なものを生産できるようになる、というわけですか」

「ええ、悪い話だとは思いませんが」

「私一人では答えかねます。少々相談させてください」

「どうぞ」

大佐はその場を離れた。他の地球人たちは、相変わらず奇異の目でこちらを見ている。

「お待たせしました」

大佐はすぐに戻ってきた。

「それで?」

「アメリカ合衆国はあなた方の提案を快諾します」

「おお、どうもありがとう」

こうして俺たちは、地球人に様々な科学技術を教えていった。
そして、5日後に地球を離れた。

「どうにかうまく行きそうですね」

俺は窓から地球を眺めている船長に話しかけた。

「ああ、計画も一歩前進だ」

「文明が発達すれば、人口も増えていきます。私たちの食糧問題もようやく解決しそうですね」

「こんな提案、呑んでくれるか心配だったが、どうやら我々の真意には気付かなかったみたいだな」

「彼らがそれを見抜けるほど、キレる存在には見えませんでしたし」

「確かに」

船長は笑った。再び外を見ると、地球の姿は既に見えなくなっていた。


それから、50年の月日が流れた。食糧問題は限界まで悪化し、世界中が飢餓で苦しんでいた。だが、それももうすぐ終わる。

俺たちは再び地球へと向かった。豊富に育った食糧を収穫するために。
意気揚々と地球に降り立った俺たちだったが、そのあまりの変貌に愕然となった。

地球人は俺たちが教えた知識を戦争のために使い、絶滅していたのだった。

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