「いや、大丈夫だから気にしないで下さい」
遼一は目の前の女に言った。
「でも服を濡らしてしまったし、それに貴方少し顔色が悪いように見えるわ。私達の部屋はすぐそこだから休んでください。お詫びしたいの」
女、いやオカマチームの愛は遼一を気に入ったようだった。
「少し疲れているだけだから…。本当にいいです。それじゃ」
遼一はそう言いながら歩き出してすぐに立ち止まった。
目眩を感じて足がふらつく。レースがはじまってから緊張の連続で疲れがピークなのと本来が病み上がりなのだ。
超人的な気力を持つ遼一も流石に無理がきかなくなっていた。
遼一は、ゆっくりと気を失っていった。薄れゆく意識の片隅で理解していた。
ああ、女じゃなくオカマなんじゃないか…。なるほど。
「きゃあ、大丈夫!?どうしよう…」
愛は遼一を抱き起こして周りを見渡した。
そこに部屋からカバちゃんが出てきた。
「あら?何してるの?男?どこでナンパしたの?」
「何ゆうてんの!倒れたんよ、この人!とにかく私達の部屋に運ぼう」
「そうね、イッコーさんに相談しよう。あらやだ、濡れてる。ああ、花瓶の水ね服を脱がさなきゃ。パンツはアタシが脱がしてあげるわねぇ」
ウキウキしながらカバちゃんが言った。
「ちょっと、それどころじゃないって。まぁ重病でもなさそうだし…。役得ってことで…」
愛の顔もカバちゃん同様ニヤケていた。
遼一は二人に抱えられてオカマチームの部屋に連れて行かれた。
遼一は、色々な意味でピンチを迎えていた。