「人の情事にふけってる姿を覗き見るとは、
おぬしも悪よのー」
里香はいたずらっぽい笑みをうかべ、
白い目で私を見る。
「違うッ。違うの。
だってさー、あんな目立つところであんなコトしてたら、
誰だって見ちゃうよー」
「そんな事言っちゃって〜。
まあ、いいや。
てか、そのカップルとかさー、どんな人だったの?」
「え〜・・・」
私の記憶の玩具箱をひっくり返した。
確か高校生ぐらいで、ここらへんじゃ珍しい深緑のチェックズボン・・・。
え・・・。
記憶を確かめてまた衝撃が走った。
その制服って・・・。
桜華高校!?
その高校は吹奏楽の名門で全国金常連の学校だ。
私が目指してる学校でもある。
「里香!桜華高校の人だった!!」
「え?嘘ー。
ん〜・・・。
ここら辺で桜華高に通ってる人と言えばあの人しかいないよ」
「え、誰だよ」
「樹璃、知らないの?
前島 晃先輩。有名じゃーん。
ウチの中学のライバル校の卒業生だよ。
マジパーカスとか上手いから〜」
「えー・・・。
嘘・・・。
なんか信じらんない」
「でも多分本当だよ。
あの人、モテモテだったんだから。
あ、確か樹璃って、桜華高校目指してるよね?」
「え、まあ・・・うん」
ちょっとギクッとする。
「今、前島先輩高校一年性だから来年入ったら先輩だよー。
レッスン受けられちゃうかもよ?」
「いいよ、そんなん。
むしろやだー。
なんか軽そう。」
私は桜華高校の吹奏楽部の人は軽そうな人がいないものだと思ってた。
いつも吹奏楽に必死で、真面目な人ばかりなのだと勘違いしていた。
しかも今は昼間。
この時期、桜華高校はコンクールで忙しいはずで、
練習真っ只中のはずだ。
そんな中この人は真昼間から女の人といちゃいちゃ?
それか、高校に入ってから落ちこぼれてぐれたか?
勝手な詮索が私の中で進む。